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大阪地方裁判所 昭和52年(ワ)4975号 判決 1980年3月06日

原告

日高喜代子

被告

フジヤ旭株式会社

ほか一名

主文

一  被告フジヤ旭株式会社は原告に対し、金二二五万五、四一八円及びこれに対する昭和四九年三月一五日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告の被告フジヤ旭株式会社に対するその余の請求、並びに被告駒姫タクシー株式会社に対する請求を棄却する。

三  訴訟費用は、原告と被告フジヤ旭株式会社間においては、原告に生じた費用の二分の一を右被告の負担、その余は各自の負担とし、原告と被告駒姫タクシー間においては、全部原告の負担とする。

四  この判決の一項は仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告

1  被告らは各自原告に対し、金四〇〇万円及びこれに対する昭和四九年三月一五日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

との判決並びに仮執行の宣言。

二  被告ら

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

との判決。

第二当事者の主張

一  原告の請求原因

1  事故

原告は、次の交通事故により傷害を受けた。

(一) 日時 昭和四九年三月一五日午後二時項

(二) 場所 大阪市天王寺区茶臼山町一一五番地先路上

(三) 事故車 (A)小型貨物自動車(京四四ぬ九二五八号)

(B)普通乗用自動車(大五五あ六三三四号)

(四) 運転者 A車 北村幸一郎

B車 橋本孔甬

(五) 事故状況 A車とB車が接触したため、B車の乗客であつた原告が負傷した。

2  責任原因

(一) 運行供用者責任(自賠法三条)

被告フジヤ旭株式会社(以下、単に被告フジヤ旭という。)は、A車を所有し、被告駒姫タクシー株式会社(以下、単に被告駒姫タクシーという。)は、B車を所有し、それぞれ自己のため運行の用に供していた。

(二) 使用者責任(民法七一五条一項)

被告らは、その営む事業のため、前記北村幸一郎(被告フジヤ旭)、橋本孔甬(被告駒姫タクシー)を雇用しているものであるところ、本件事故は、同人らがそれぞれ被告会社の業務の執行として前記各事故車を運行中、前側後方不注意の過失により発生させたものである。

3  損害

(一) 傷害、治療経過、後遺症

(1) 傷害

頭部打撲傷、頸部、腰部挫傷。

(2) 治療経過

昭和四九年三月一八日から同月二三日まで(六日間)西川医院に通院(内治療実日数五日)。

昭和四九年三月二五日から昭和五一年一月三一日まで(六七八日間)小林整形外科診療所に通院(内治療実日数三八二日)。

(3) 後遺症

頭痛、不眠症、いらだち、吐気、舌のもつれ、肩のこりなどの症状(いわゆるバレリユー症候群)が、昭和五一年一月三一日固定した(後遺障害等級第一二級に該当)。

(二) 損害額 四六五万九、二三五円

(1) 治療費 九四万五、五八〇円

(2) 通院交通費 三〇万円

原告の家から小林整形外科まで、国鉄運賃は片道一〇〇円、タクシー代は片道二、六〇〇円であつたが、平均して週に一度はタクシーを利用せざるを得なかつた。右通院交通費の合計額は三〇万円を下らない。

(3) ヘアセツト代 三六万円

原告は、接客を業とする新栄興業株式会社の従業員で、右業務に従事する必要上、通常五日に一度の割合でヘアセツトをしなければならなかつたが(一回の代金は、二、〇〇〇円)、治療のため斜面牽引療法を受けると、すぐセツトがくずれるので二日に一度の割合でヘアセツトをしなければならなかつた。そのため、治療期間中、セツト代金三六万円を余分に支出した。

(4) 休業損害 三九万七、〇八四円

原告は、本件事故による受傷のため前記新栄工業(株)を七九日間欠勤し、この間三九万七、〇八四円の休業損害を蒙つた。

(5) 後遺症による逸失利益 一九五万九、二三五円

原告は、一日当り五、〇二六円の収入を得ていたところ、前記後遺症のため、四年間にわたり三〇%の労働能力を喪失したから、次の算式により一九五万九、二三五円の得べかりし利益を失つた。

5,026×365×0.3×3.56=1,959,235

(6) 慰藉料 二〇四万円

(イ) 通院分 一〇〇万円

(ロ) 後遺症分 一〇四万円

(7) 損害の填補 一三四万二、六六四円

原告は、右損害のうち、(1)治療費と(4)休業損害については、全額の支払を受けた。

4  よつて、原告は被告ら各自に対し、前記損害の内金四〇〇万円及びこれに対する本件事故発生の日から完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する被告フジヤ旭の認否及び主張

1  第1項の事実は認める。

2  第2項の事実も認める。

3  第3項について

(一) (一)の事実中、(1)、(2)は認めるが、(3)は争う。

原告の後遺症は、後遺障害等級には該当しない軽度のもので、その吐気、頭痛等は、いずれも心因性のものである。また、原告の症状には、更年期障害、年令的な変形性脊椎症が大きく寄与しており、これらが寄与する限度で、被告らの損害賠償責任は存在しない。

(二) 損害額について

(1) 治療費について

認める。

(2) 通院交通費について

原告の住所からは、徒歩で通院が可能であつた。タクシーによる通院の事実はない。然らずとするも、原告の勤務先は医院に近く、勤務先からの通院が可能であつたから、多額の交通費は不要であつた。

(3) ヘアセツト代について

原告の年令は五〇歳前後であり、職種はいわゆるお座敷係であつて、ホステスのように美貌を売物にする接客婦ではない。従つて、原告が主張するようなヘアセツトの必要性がない。仮にその必要性があつても、右損害は本件事故と相当因果関係がない。少くとも、休業期間中のヘアセツト代は不要のはずである。

(4) 休業損害、後遺症による逸失利益、慰藉料はいずれも争う。

(5) 損害の填補として、原告が治療費九四万五、五八〇円のほか三九万七、〇八四円の支払を受けたことは認める。

三  請求原因に対する被告駒姫タクシーの認否及び主張

1  第1項の事実は認める。

2  第2項について

(一) (一)は認める。

ただし、本件事故は、A車の運転者の一方的過失により惹起されたもので、B車の運転者には何らの過失もない。

(二) (二)の事実中、A車の運転者に過失のあつたことは認めるが、その余の事実は否認する。

3  第3項は不知。

四  後遺症の程度について原告の主張

本件事故の状況は、B車の右側を並進中のA車が左側に進路を寄せたため、B車に接触し、B車は、A車と道路左端のコンクリート壁との間を二、三回はじきとばされるように往復したというものである。B車の乗客であつた原告は、シートに深く腰をかけていたが、事故の衝撃でシートから落ち、床に横倒しの状態となつた。事故直後、原告は気もどうてんしており、頭、腰、膝などを打つて直立することができない状態だつたが、出勤途中であつたため、それほどのケガではないと思つて、他のタクシーで出勤した。ところが、翌一六日朝起床してみると、首が動かず、舌がもつれるので、勤務を休み、西川医院で診察を受けた。翌一七日なると、嘔吐、めまい、頭痛、全身衰弱と、症状は一層悪化し、その後もこれらの症状は少しも改善されないので、小林整形外科へ転医した。そして、六七八日間という長期間の通院治療を受けたのであるが、前記の症状は改善されないまま、昭和五一年一月三一日症状固定とされてしまつた。しかし、症状固定後も、時に頭がカーツとなり、滝のような汗が額から流れたりすることがあり、極めて疲れ易く、特に昭和五一年夏からは膝がはれあがり、一歩も歩けない状態に陥つた。症状固定後昭和五四年六月二六日までの一、二四一日間に、実に七二%にのぼる七六七日間もムチ打ち症のための治療を受けており、この間、言語障害、冷汗、頭痛に悩まされ、今後も改善の見通しは全くない。事故後五年八か月の間、ほぼ一〇日に七日の割合で通院を余儀なくされ、そのため住所も病院近くにかえなければならなかつたという事実自体の中に、耐え難い原告の苦痛が表われているというべきである。以下の事実を総合すれば、原告の後遺症は、本来ならば後遺障害別等級表第九級に該当するものと考えられるが、少くとも第一二級に該当することは明らかといわなければならない。

第三証拠〔略〕

理由

一  事故

請求原因第1項の事実は当事者間に争いがない。

二  責任原因

1  運行供用者責任(自賠法三条)について

請求原因第2項(一)の事実は当事者間に争いがない。

ところで、被告駒姫タクシーは、本件事故は、A車の運転者の一方的過失により惹起されたもので、B車の運転者には何らの過失もない旨主張するので、検討するに弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる丙第一号証、証人橋本孔甬の証言及び原告本人尋問の結果によれば、北村幸一郎は、A車を運転し、前記事故現場道路(幅員約一五メートル)中央寄りを、東から西に向け時速約四〇キロメートルで進行中、後続の普通乗用自動車がジグザグ運転しながら接近してきたため、これを避けようとして左に転把したところ、A車左側を並んで走定していたB車右前部フエンダー付近にA車左前部を衝突させたこと、北村は、後続車に気を奪われ、衝突するまでB車の存在に全く気付かなかつたこと、一方橋本孔甬は、B車を運転し、事故現場道路左寄りを、東から西へ向け時速四〇ないし五〇キロメートルで進行中、その右側を並んで進行していたA車が突然左に寄つてきたため、避ける間もなくこれに衝突し、急ブレーキをかけたが、さらに車体左側を道路左端のコンクリート壁に衝突させて停止したこと、なお原告は、B車(タクシー)の乗客として、その後部座席左側に乗車していたが、これら衝突の衝撃により、座席から床に落ちて横倒しになつたこと、などが認められる。右認定のとおり、本件事故は、A車の運転者が左側の安全を確認することなく、急に左に転把したために発生したもので、B車の運転者としては避けようのない事故であつたことが明らかであり、B車の運転者には、本件事故につき何ら過失はなかつたものといわなければならない。

なお、被告駒姫タクシーは、B車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたという自賠法三条但書所定の要件事実については、何ら主張立証するところがないけれども、前記認定の事故状況からすれば、右要件事実の存在は、本件事故発生とは関係がないものと認められるから、前記のとおり本件事故がA車の運転者の一方的過失により発生したもので、B車の運転者に過失がない以上、右要件事実の主張立証がなくても、同被告は、自賠法三条但書により免責されるものと解すべきである(最判昭和四五年一月二二日民集二四巻一号四〇頁参照)。

2  使用者責任(民法七一五条一項)について

被告フジヤ旭が、その営む事業のため前記北村幸一郎を雇用し、右北村は、同被告会社の業務の執行としてA車を運転中、その過失により本件事故を発生させたことは、原告と被告フジヤ旭間において争がない。

一方、被告駒姫タクシーが、その営む事業のため前記橋本孔甬を雇用し、右橋本が、同被告会社の業務の執行としてB車を運転中、本件事故を発生させたことは前記認定の事実及び前出丙第一号証により認められるが、右橋本には、本件事故発生につき何ら過失はなかつたから、被告駒姫タクシーは、本件事故につき使用者責任も負わないことが明らかである。

よつて、被告フジヤ旭は、自賠法三条、民法七一五条一項に基き、本件事故により原告の蒙つた損害を賠償する責任があるが、原告の被告駒姫タクシーに対する請求は、その余の点について判断するまでもなく失当といわなければならない。

三  損害

1  傷害、治療経過、後遺症

成立に争いのない甲第一号証の一ないし七、第三号証、原告本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第八号証によれば、原告の本件事故による傷害、治療経過、後遺症として以下の事実が認められる。

(一)  傷害

頭部打撲症、頸部、腰部、右小指挫傷。

(二)  治療経過

昭和四九年三月一八日から同月二三日まで(六日間)西川医院に通院(内治療実日数五日)。

原告は、出勤途中に本件事故に遭遇したものであるところ、事故当日は、別のタクシーに乗り換えて出勤したが、翌一六日朝起きると首がまわらず、腰痛があり、西川医院にて受診、翌一七日は、悪心嘔吐、めまい、頭痛も加わり、三月二三日には、舌がもつれるなどの状症があつた。

昭和四九年三月二五日から昭和五一年一月三一日まで六七八日間)小林整形外科診療所に通院(内治療実日数三八二日)。

小林整形外科に通院当初の頃は、頸部痛が著明で、言語障害も軽度に認められ、右胸鎖乳突筋の緊張高度であつた。右腰部、特に第五腰椎部がやや右に偏位して、圧痛があつたが腰椎に不橈性はなく、レントゲン線上、腰椎部及び頭部に著変は認められず、また、頸部運動制限が中等度にあり、レントゲン線上後屈時に第三、四頸椎椎体がやや後方に偏位しているが、他に著変は認められなかつた。そして昭和四九年五月中旬頃は、頭重感と頸部痛がなお持続していたが、薬物療法、斜面牽引療法の施行により症状は漸次軽快に向い、頸部運動制限も良好となりつつあつた。しかし、その後も症状は一進一退を繰り返し、頭重感(時に頭痛を伴う。)並びに項筋緊張感が頑固に持続し、特に天候不順時には症状の増強を訴えていた。昭和五〇年一一月一七日施行の脳波検査、頭頂部に時々徐波群の出現が認められた。その後も引続き通院加療が継続されたが、いわゆるバレリユー症候を軽度に残して昭和五一年一月三一日症状固定と診断された(なお、レントゲン線上後屈時に認められた第三、四頸椎椎体の後方変位並びに脳波検査の結果認められた徐波群の出現と本件事故による受傷との困果関係は不明である。)。

(三)  後遺症

両肩甲部、項部の筋緊張感が時々起る、疲労時舌の動きが悪く、ラ行発音が不明瞭となる。吐気、頭痛等のバレリユー症候群が昭和五一年一月三一日固定した(ほかに自覚症状として、不眠症、神経のいらだちを原告は訴えていた。)。

以上の事実が認められ、右認定を覆すに足りる証拠は存しない。

ところで、原告本人尋問の結果とこれにより真正に成立したものと認められる甲第六、七号証によれば、原告は、さらに昭和五一年八月一七日から翌五二年一月二六日まで右膝関節痛により昭和病院に入院した(原告は、それ以前から胃潰瘍のため同病院内科に通院していた。)ことが認められるが、この入院と本件事故との因果関係を認めるに足りる証拠はない(前記の事実から明らかなように、膝痛は、事故後二年五か月余りも経過してから始めて訴えられたもので、それまで膝の受傷が確認されたり、膝の治療を受けたりしたことは全くなかつた。)。

また、前出甲第六、七号証によると、原告は、右膝関節痛により入院した昭和五一年八月一七日以降、右昭和病院において頸腕症候群により毎日牽引療法を受け、退院後も昭和五四年六月に至るまで頻繁に通院して右治療を受けた(この間の昭和五二年六月八日から同年八月二二日まで左第二、三、四中足骨々折により再度同病院に入院している。)ことが認められる。しかしながら、原告本人尋問の結果及び前出甲第六、七号証によると、原告は、昭和五一年一月三一日の症状固定後数か月間は、治療を中断していたところ昭和病院に他病(右膝関節痛)で入院したのを機会に再び牽引療法を受け始めたことが窺われるし、同病院に通院中、原告が訴えていた体熱感、冷汗、言語障害、頭痛等の症状は、昭和五三年一二月一五日の脳外科での検査結果、脳梗塞によるものと診断されていることが甲第六号証により認められ、さらに、前記のとおり原告は、昭和病院において胃潰瘍、右膝関節痛、中足骨々折等の治療も併行してを受けていた事実をも考え合わせると、同病院に入通院して受けた牽引療法による治療については、そのすべてについて本件事故との相当因果関係を肯定することはできないものといわなければならない。

なお、被告フジヤ旭は、原告の後遺症につき、吐気、頭痛等の症状は、いずれも心因性のものであり、あるいは、更年期障害、年齢的な変形性脊椎症が大きく寄与している旨主張するが、右被告の主張事実を肯認するに足りる的確な証拠はない。

2  損害額 二二五万五、四一八円

(一)  治療費 九四万五、五八〇円

右は当事者間に争いがない。

(二)  通院交通費 二六万六、四〇〇円

前記認定の事実及び原告本人尋問の結果によれば、原告は通院交通費として少くとも次のとおり二六万六、四〇〇円を支出したことが認められる。

タクシー代 一回五、二〇〇円 三八回分

一九万七、六〇〇円

電車代 一回二〇〇円 三四四回分

六万八、八〇〇円

(三)  ヘアセツト代 二〇万円

原告本人尋問の結果及び前記認定の事実によれば、原告は、接客を業とする新栄興業株式会社に仲居として勤務し、右業務に従事する必要上、事故前は四日に一度の割合でヘアセツトをしていたが(一回の代金は二、〇〇〇円)、昭和四九年七月頃から昭和五一年一月頃まで、ほぼ二日に一度の割合で通院し斜面牽引療法を受けていたところ、右牽引療法を受けるとセツトがくずれるため、事故前よりほぼ倍近い割合でヘアセツトをしなければならず、これがため少くとも一〇〇回分二〇万円を余分に支出したことが認められる。そして右金員の支出は、本件事故と相当因果関係があるものと認むべきである。

(四)  休業損害 三七万六、二七七円

成立に争いのない甲第五号証の一ないし三、証人生田美代子の証言により真正に成立したものと認められる甲第四号証、及び原告本人尋問の結果によれば、原告は、事故当時三三歳で前記新栄興業(株)に勤務し、一日平均四、七六三円の収入(給与、賞与、チツプ収入の合計)を得ていたが、本件事故により昭和四九年三月一六日から同年六月二日まで七九日間休業を余儀なくされ、その間合計三七万六、二七七円の収入を失つたことが認められる。

(五)  後遺症による逸失利益 三〇万九、八二五円

前記認定の受傷、治療経過、後遺症の内容程度によれば、原告は、前記後遺症のため、症状固定時(昭和五一年一月三一日)から四年間、その労働能力を五%喪失したものと認められるから、右症状固定時における逸失利益の現価を年別のホフマン式により年五分の割合による中間利息を控除して算定すると、金三〇万九、八二五円となる。

4,763円×365日×0.05×3.5643=309,825円

(六) 慰藉料 一五〇万円

本件事故の態様、原告の傷害の部位、程度、治療の経過、後遺症の内容程度その他諸般の事情を考え合わせると、原告の慰藉料額は、通院分が一〇〇万円、後遺症分が五〇万円とするのが相当であると認められる。

(七) 損害の填補 一三四万二、六六四円

原告が本件事故による損害の填補として、金一三四万二、六六四円の支払を受けたことは当事者間に争いがない。

よつて、原告の前記損害合計額三五九万八、〇八二円から右填補分を差引くと、残損害額は、金二二五万五、四一八円となる。

四  以上の次第であるから、原告の本訴請求は、被告フジヤ旭に対し、金二二五万五、四一八円及びこれに対する本件事故発生の日から民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において正当であるから、これを認容し、被告フジヤ旭に対するその余の請求並びに被告駒姫タクシーに対する請求は失当として棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、仮執行の宣言につき同法一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 小圷眞史)

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